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十六夜

十六夜

 

不図、目が覚めると時計は夜中の二時丁度を指してゐた。私は一度目が覚めてしまふと、もう二度寝は出来ないので、真夜中にもかかはらず、珈琲を淹れ、人心地就いたのである。

――さういへば、今日は十六夜の月ではないか!

昨日の中秋の名月も美しかったが、私は満月よりも少し控へめで、不完全な、つまり、盛りを過ぎたとでも言ふべきか、そんな十六夜の月が好きであった。それは満月のやうな、気を抜くとその輝きが光の矢となって突き刺さる程の光度はなく、ほんの少しではあるが、下弦が欠けるその十六夜の月が放つ柔らかい光は、闇好き、否、闇気狂ひの私には、それが丁度良かったのである。

中秋の名月程の厳めしさはなくとも十六夜の月は星が鏤められてゐるとはいへ、昼間に比べれば、闇と言へるその夜空で凜としてゐて、詩情を誘ふのだ。例へば次のやうである。

 

十六夜に

吾を見つけて

影動く

それを踏んでは

影肩で嗤ふ

 

ユリイカと

叫んでゐるのか

鈴虫の声

 

私は珈琲を飲み干すと真夜中に散歩に出たのである。月は既に西南西の空にあり、、沈み行くのを待ってゐた。時折、雲が懸かるのであるが、十六夜の月の光は雲を照らし、、鰯雲が月を中心に放射状に棚引いてゐて、それが旭日旗を思はせる、または、西方から死の光を放ち、死を、全ての死を祝福してゐるかのやうな、壮麗な情景を形作ってゐた。

私はその光の条に最近死んだ愛犬の姿を投影しては、

――よく生きました。

と呟いたのである。

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