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眩暈

眩暈

 

どくっと鼓動がすると、

奇妙に世界が歪曲し、

真白き霧のやうなもので世界が蔽はれ始め、

俺は五蘊場に逃げ込みつつ、卒倒するのだ。

 

これには何の予兆もなく、卒倒は忽然とやってくる。

卒倒しながら俺の意識は白濁する事なく妙に冴えて

倒れた俺との自己との対話を冷静にしてゐるのだ。

 

眼前は、しかしながら、何にも見えず、

唯唯、いつもより激しい鼓動を感じるのみなのだ。

 

その時、俺は覚悟を決めてゐるのか、妙に気持ちが悪いほどに冷静なのだ。

そして、五蘊場に逃げ込んだ俺は、

やどかりがちょろちょろと貝殻から足を出すように

俺の内部の目を少しづつ広げながら、

俺と言ふ存在を確認する。

 

とはいへ、卒倒してゐるのは徹頭徹尾俺なのだが、

何処か第三者的に俺は俺を観察してゐる。

其処にしかし、俺の正体は見えず、

唯、白から赤く染まった血の色の世界を凝視するのみなのだ。

 

確かに、俺は最早病んでゐるに違ひないが、

だからといって何をするわけでもなく、此の死に近づきつつある俺を

何処かで楽しんでゐるのだ。

 

それは薄氷の上でダンスを踊るやうなもので、

何時氷水の中に堕ちて凍死するのか解らぬ状況に似てゐるのかもしれぬ。

 

縦が横になり、つまり、吾が枢軸は地平線と平行なまま横たはる俺に対して

五蘊場に逃げ込んだ俺は楽しさうに嬉嬉として快哉の声を上げるのだ。

 

――ざまあない。

 

不自由の中にちょっとした自由を見出したのか、

多分、卒倒している時の内部の俺は満面の笑みを浮かべて、

その状態を楽しんでゐるに違ひない。

 

しかし、そんな楽しい時間は永劫に続く事なく、

卒倒から立ち上がる事が出来るやうに直になる俺は

それに安堵しながらも卒倒の時間の名残を惜しんで

生を冒涜するのだ。

 

自身を呪はずしてはちっとも生きられぬ俺は

卒倒の時間にこそ許されてゐると感じてゐるのか、

予兆もなく忽然とやってくる卒倒を愛して已まないのだ。

 

多分、一瞬が永劫のやうに間延びする卒倒のゆっくりとした時間の流れの中に、

身を置く幸せを全身で精一杯に感じながら生を実感してゐるのかもしれぬ。

 

生の盈虚が現はれると先験的に知ってゐるのか、

卒倒を俺は絶えず待ち侘びてゐるのかもしれぬ。

さうして、俺は疑似死を味はってゐると誤謬しながら

本当に死にたいと思ってゐるのかもしれぬ。

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