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落涙

落涙

 

自問自答の末に吾落涙す。

何故に涙が零れ落つるのか吾暫く解らず。

然し、次第にそれが《杳体》の渦動に因ある事が闡明す。

扨(さて)、抑(そも)抑(そも)《杳体》とは何なのかと問はれれば、

其は、存在の変態系のあり得べき一つの姿に思ひ至る。

森羅万象に問ふ。

――皆、吾に堪へ得るのか。

と。

すると、此の世の存在どもは一斉に言挙げを始め、

――否、吾は吾ならざる吾へと変容する事を渇仰す。

との大合唱が湧き起こり、

その大合唱はやがて、風音の如く無数の声が重なり合った美しき大合唱曲のやうな風貌を纏ひしが、

能く能く其に聞き耳を欹てれば、

呪詛の言葉しか聞こえて来ず。

此の世の森羅万象は全て《杳体》を渇仰してゐることに間違ひなく、

扨、その《杳体》なれど、《杳体》とは一体何ぞと自問すれば、

《杳体》とは、存在を顛覆させた、

つまり、此の宇宙を存在するだけで震へ上がらせる存在の事で、

では、それを具体的に言及すれば、Black holeをも軽軽と呑み込む存在なりしか。

つまり、《杳体》が一度此の世に出現すれば、

《杳体》は眦一つ動かす事なく、

此の宇宙を丸呑みする存在に為り得る「希望」の、森羅万象が不本意にも此の世に存在させられた、

その呪詛を丸呑みし得る存在革命の狼煙を上げるその端緒になる存在になるのだ。

《杳体》――其は、此の宇宙を顛覆させるTerroristとして存在するべく、

その出現が宇宙誕生より此の方、渇仰されし存在様式なのか。

ともあれ、《杳体》は、《虛体》をも呑み込む待望の存在様式なれば、

その出現時、Messiahの出現以上に世界が、

大交響曲を奏でる祝祭の儀が厳粛に執り行はれる筈なのだ。

さうして、吾はこれに感極まって落涙す。

然し、今は其の憤懣による悔し涙が落涙するのみ。

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