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重さ

重さ

 

そのお前の死体の重さに

俺はお前の無念やら悔しさやらの念の重さをひしひしと感じたのだ。

お前は死の直前まで東を向きながら、

最早眠っては死すると言ふことをはっきりと知りつつ、

よろめきながらもしっかりと前脚で踏ん張りながら、

それでもお前はおれに愛想を振りまき、

さうして死力を尽くして死に抗ってゐたのであったが、

しかし、到頭、力尽き、何処にそんな力が残っていたのか、

体を引き摺るようにして西を向いてぶっ倒れて死んでしまった。

お前は犬と言ふ種ではあるが、

お前はホモ・サピエンスと同じやうに死といふものをきちんと認識してゐた。

さうぢゃなきゃ、数日眠らずに次第に死へと移行することを拒みながら、

死すまで過ごす筈はないのだ。

眠り即ち死を意味するその最期の時は、

お前にとっての一大事であり、

さうしてお前の生の集大成は成就したのだ。

西方浄土とはよく言ったもので、

お前はそれまで東を向いてゐた体躯を

西へと向けて更に西の方へと躙り寄ろうとしながら

斃れてしまったのだ。

お前の最期の振舞ひから推し量るに

太陽が昇る東は生を象徴し、

太陽が沈む西は死を象徴してゐると言ふのか。

ホモ・サピエンスよりも本能が多く残ってゐるだらうお前は、

本能的に東は生、西は死と言ふことを知ってゐたといふのか。

さうすると仏教の教へは正しいと言ふことなのか。

それにしてもお前の最期は何と神聖な雰囲気が漂ふものであったのか。

死期が近付くにつれて辺りには香の匂ひが立ち籠めるやうに

芳しい香りが漂ひ、

しかし、辺りはぴんと張り詰めた緊張感に満ち溢れてゐたのだ。

しかしながら、死神には勝てず、

お前はうとうとと気を喪ふ時間が次第に長くなりつつ、

ゆっくりと死へと移行していった。

その時俺は大粒の涙を流し、

お前をしっかと抱き締めて

――もう十分だ。楽になっていいんだよ。

と語り掛けたが、

お前は最期まで生に縋り付くことを尚も已めようとせずに、

死に抗ひ、そのいぢらしさが何とも愛おしかったのだ。

さうしてお前の遺体を持ち上げた時のその重重しい重さは、

俺の脳天をぶっ叩くやうな衝撃を齎したのだ。

その小さな遺体の何処にそんな重さがあったというのか。

きっと遺体には生前の年月の全ての念が宿るに違ひないのだ。

でなければ、あんなに重い筈はないぢゃないか。

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