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鎮魂の儀

鎮魂の儀

 

彼の世の罵詈雑言の喧噪の中、

そいつがぽつりと呟いた。

――僕の死に際して泣いてくれたものは皆無だった。

それが事の全てを物語ってゐてたのかもしれぬ。

そいつの呟きで

これまで此の世に対して口汚く罵ってゐた有象無象が、

此の世を罵ることを已めて

一斉に己に対して罵り始めたのである。

さう、彼の世の全ての何一つのものも

己の死に際して泣いてくれたものは皆無だったのだ。

それは己に徳がなかっただけなのか、

そもそも塵を捨てるやうに

死を捨て去る此の世の有象無象の

その死を余りにも粗末に、

しかも、死を忌み嫌ふその異常なまでの死に対しての潔癖症ぶりは、

此の世を途轍もなく息苦しくしてゐるとも気付かずに、

さう、何ものも死に対する鎮魂の儀のやり方を忘却してしまってゐて、

何ものも鎮魂の儀が執り行へぬ此の世の有様に

そいつの呟きが此の世に木霊して、

何時終はるとも知れずに絶えず此の世に鳴り響いてゐたのだ。

死に対する儀礼をすっかり忘却してしまった此の世の有象無象は、

当然の事、死に対する非礼の限りを尽くし、

さうやって死を禁忌のものとして封印したのであるが、

それは表面的に過ぎず、

溢れ出る、否、湧出する死に対して

此の世の有象無象は

新たなる鎮魂の儀の仕来りを整へなければならず、

しかも、それは死ときちんと渡り合へるに相応しい儀となるべきで、

人工知能をもその使命を終へたならばきちんと葬る儀礼の儀を整へなければ、

不滅などと言ふ余りにも馬鹿げた夢物語を

少女が大切な縫いぐるみを抱くやうに抱きながら、

鎮魂は終ぞ何ものも最早行はぬ途轍もなく虚しい

此の世が永続すると言ふ虚構にしがみつきながら、

不滅の此の世と言ふ幻想に踊らされ、

生者は死と言ふ安息を見出すことなく終始息苦しい日常を

封印された死を解き放つことなく、

生きる地獄にも等しい生を、否、存在を生くるのみなのだ。

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