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何をして

何をして

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何をしておれは耳許で囁くものを

一撃必殺で殺してしまったのだらうか。

そいつは影のやうにおれに付き纏ひ、

――ぷふい。

と嗤ったことがいけなかったのだ。

思はずそいつの胸から漏れ出たその嗤ひ声は、

おれの嫌がるところを突いてゐて

そのおれの嫌な面と共鳴し

おれを乗っ取らうとしたからなのだ。

へっ、おれがおれであることにそれ程に拘ってゐたとは

その時まで解らなかったが、

しかし、おれはおれに鳥もちの如くにべちゃりと執着し、

おれに躓きながらも

おれがおれであり続ける愚行に、

一縷の望みを抱いていたと言ふことなのか。

それにしても、おれはおれの耳許で囁いた奴を瞬殺したが、

何に対しておれはそんなにも激怒したのか解らぬながらも

そいつは確かにおれの逆鱗に触れたのは間違ひないのだ。

しかし、おれはそいつがその時おれに何と囁いたのかはもう覚えてゐないのであるが、

激怒したおれは、

そいつを血祭りに上げ、

おれがおれに対して抱いていた憤懣を

そいつをぶちのめすことで

憂さ晴らしをしたことは否定出来ず、

その時に感じた晴れやかな気持ちで

おれは久しぶりに飯を美味く喰ったことだけは覚えてゐる。

ところでおれが瞬殺したそいつは

おれの影であったのか。

ならば、おれは最早日輪の下に出ることは出来かねず、否、禁じられ、

そんな俺は唯、闇の中に居場所を見出しては、

さうして闇をしておれの影と嘯くおれは、

さうして闇に呑み込まれることがおれの本望なのか。

へっ、と嗤ふおれは

闇に溺れることに快楽を見出し、

闇に呑み込まれる安寧に胎内回帰の見果てぬ夢を疑似体験してゐるといふのか。

馬鹿らしい。

何もかもが馬鹿らしい。

真実を知ってゐるのはこの闇なのか。

日輪は欺瞞しかおれに見せずに、

黄昏時の夢現の境が溶け出す時に

真っ赤にその面を染めながら

空をもその存在を恥じ入る茜色に染め上げて、森羅万象を含羞に陥らせるのだ。

日輪は白昼に真実を照らし出すなんて嘘っぱちで

毎日、日出日没にその顔を赤らめなければ

顔を出せぬ日輪が真実を照らす訳がなからう。

それ故に何時もその表情を変へずに、

しかし、変幻自在な闇は

おれを誑かすには簡単至極な筈であるが、

そこには闇が先験的に持ってゐる何とも言へぬ哀しみが滲み出てしまひ、

それが闇の信用がおける部分であり、

それがおれが光よりも闇を信ずる理由なのだ。

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