思索に耽る苦行の軌跡

2017年6月26日 思索、詩、アフォリズム 0

鋭い犬歯で剔抉された中指上部の傷から
どくどくと血が溢れ出すのを目の当たりにしたおれは、
それが将にこのおれに相応しい傷として
目に焼き付けるほどに凝視す。

その深い傷は、中指ばかりではなく、
おれの心も剔抉したのだ。
その心の傷手は、
これまでおれが目を背けて来た心の急所を見事に抉ってゐて
おれはへらへらとその心の急所を剔抉された己を嘲笑ふ。
さうすることでおれは、それでは何をしておれなんぞにとほざいて来られたのかと
大いに嘲弄したのだ。
さうすることで、おれは己に対する忸怩たる思ひの溜飲を下げ、
さうしてそんなおれをおれは簡単に見捨てたのだ。
そんな悲痛な感情を一時たりとも持ち堪へられず、
おめおめとおれを簡単に見捨てられるおれは、
その足下に泣き崩れるおれの幻影を凝視せねばならぬのだ。

しかし、おれはそんな幻影なんぞは捨て置き、
今も尚、血がどくどくと傷口から溢れ出しす手を一振りして血を払ひ、
己で己を嘲弄する欺瞞に対してぺっと苦苦しく唾を吐く。
さうして唾棄されたおれは、新しく生まれ変はれるのかといふと、
決してそんな事はなく、
おれの足下に泣き崩れたおれの本性にびんたを食らはせて、
おれはそうやって大地に屹立す。
さうして漸くおれはおれの羸弱(るいじゃく)さにはっきりと見切りをつけて
おれの幻影をこれまた架空の日本刀でぶった切るのだ。
さうして幻影から吹き出す血を全身で浴び、
血腥い動物の臭ひを身に纏ひ、
漸く人間の顔を、つまり、仮面を被るやうにして此の世におれの顔を晒すのだ。

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