神消ゆ

 

薄ら寒い冬空の黒雲を見上げながら

これまで透明だった神は

何時しか内部崩壊を始めてゐたせいで、

その腐り行く醜態を晒してゐた。

それは神にとっては恥辱ではあっても、

それは神が永眠するためには必要不可欠のことで、

その神の含羞が結晶の壊れた雪となって舞ってゐた。

神はその腐った悪臭漂ふ息を吐くと、

ひゅううっと、寒風が吹き荒び、

その寒風に混じった瘴気に当てられた私は、

鼻を曲げるやうな悪臭に堪へきれず、

ちん、と鼻をかみ、

その黄色く濁った鼻水を見ては、

嫌な顔をする。

さうして次第にぼろぼろと崩れだした神は、

内部が腐っても尚、凜凜しく屹立する大木のやうには行かず、

その哀れな醜態を晒すのみ。

それに礫を投げつける私は、

何とか一刻も早く神が永眠することを祈りながら

樵が斧で木を切り倒すやうに

神の足下を目掛けて礫を投げつけるのだ。

さうして次第に神の足下が削られ行くにつれて、

みしみしと音を立てて

腐った神は崩壊を始める。

それが鬱勃と湧き上がり崩壊する雲の如くに

腐った神もまた、雲の上へと倒れ行くのだ。

さうして朽ち果て崩れ散った神はぼろぼろの破片となり

雲の中で逆巻く風に舞ひながら

地へは雹となって降り注ぐ。

それと共に沸き起こる暴風に

家の屋根は吹き飛ばされ、

木木は根こそぎ倒されて、

やうやっと神は永眠の床に就く。

その日が永久の平和の始まりか、

それとも底無しの絶望の始まりかは解らぬが、

唯、神を永眠させられたといふ安堵の心は、

私の胸をいっぱいに満たすのだ。

つまりはこれで神をもうこれ以上晒し者にならなくて良く

神にとっては肩の荷が下りて、

もう自由にあの空を走り回って良いといふ永劫の悦楽に耽溺は出来、

神には永劫の解放が齎されるのだ。

それが至福といふものではないかね。