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土台自身の影を追ったところで、何か摑める筈もなく、
しかし、それが無駄なことなのは知った上でも、尚、自身の影を追はずして
寂滅するのは口惜しいのは、存在する何ものも同等で、
さう思はずして果たして存在は存在出来得るのであらうか。


――何、そんな事を考へられる時間があったならば、己の内奥に棲む「そいつ」を一刺しして抹殺するのがいいのさ。それが出来ないのであれば、影を追ひ続ける外ないぜ。


と、「彼」は語った。しかし、私にはその「彼」が誰なのか解からぬふりをして、
にやにやと嗤ひながら、知らぬ存ぜぬを決め込んだのだ。そして、私は私の五蘊の場に射影される私の影を追ひ求め、そして、迷子になってしまったのだ。


――へっへっ、とんだお笑い草だな。私なんぞは「そいつ」に呉れちまへばいいのさ。何故って、私なんぞは「そいつ」の餌にもなりゃしないからさ。


と、再び「彼」が語った。私は、またも「彼」が誰なのか素知らぬふりをしながら、
にやにやと嗤ひながら、かう訊いてみたのだ。


――影って何の影のことかね?
――お前が此の世で見せる陰翳の狎れの果てさ。
――陰翳? さうぢゃないだらう? 影は、ものあれば、そして、もの皆、趨光性なればこそ影が存在するのと違ふかね?
――馬鹿らしい。影あるものは全て趨闇性なものさ。
――趨闇性?
――さう。闇に向かふのが存在の宿命なのさ。
――それこそとんだ茶番だぜ。
――では、何故、此の世は闇ばかりなのさ。光と闇の勢力図から言へば圧倒的に闇の勝ちだぜ。


と、その時さう言ったきり、「彼」は露と消えて、私が此の世に独り単独者として迷子のままに残されたのだ。

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