おれの人生の目標は、
おれの完全なる瓦解であり、
確かにおれはすっかりと自己を瓦解し尽くし、
廃人同様の痴人に成り得たのであるが、
生命とは不思議なもので、
すっかりと瓦解し尽くした自己は、
そのTrauma(トラウマ)を抱へながらも
自己再生の道を
とてもゆっくりではあるが始めたのである。


とはいへ、一度瓦解した自己は元通りに再生する筈もなく、
それはとても歪な自己として再構築されたのであった。


その自己は悉く吾に反抗し
最早、吾の手には負へない鬼として
吾の内部で暴れ回ったのであった。
それを御するのはこれ以上無理だと断念した吾は、
自己が内部で暴れ回るに任せ、
その時の胸の痛みは甘んじて受け容れ、
時時刻刻とその鬼に侵蝕されながら
吾が正気を保つのは最早不可能であった。


狂気に支配されるに至った吾は、
最早常人の範疇から零れ落ち
何人にも理解される事はなく
途轍もない孤独の中、
独り内部の狂気に振り回されながら
饒舌な自己との対話を繰り返しつつ、
他人には指差され、
狂人として此の大地に屹立する苦悶を抱へ込んだのである。


――ざまあないな!
と、他人に罵られ、
将又
――自業自得!
と、毒突かれ、
それでも吾は最早
――おれはおれだ!
と言へず
憤懣遣る方ないおれは
おれに毒突いたのである。
また、おれは吾を破壊し、
自己を瓦解する気なのであらうか。


唯、只管に自己に沈潜しながら、
おれは吾の反抗を遣り過ごしつつ、
既に狂ってゐたおれの反抗を甘受しつつも、
おれは安寧を欣求したのだ。
しかし、そんな安らかな時が来る筈もなく
おれの内部で荒れ狂ふ狂気の自己は
おれを喰らひつつ、
――わっはっはっ。
と狂気の嗤ひを放つのであった。