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妖しい気配は梅雨時のべったりと纏はり付く
湿気をたっぷり含んだ空気の如くにあり、
一度その気配に纏はり付かれたなら
その毒気に当てられ、
吾は一瞬で失神する。
さうならないやうに吾は気力を充溢し
全身鳥肌を立てながら気を放ち
べたりと纏ひ付くのに隙を窺ってゐる
妖しい気配を放つそいつに対峙する。
吾は気が結晶した刀を持って構へ、
じりじりとしたその緊迫した時間を
そいつに斬り込む間合ひを測りながら、
はやる心を落ち着かせ、
にじり寄る。


――すう、はあ。
辺りには吾の呼吸音のみが静かに響き、
そいつの妖しい気配は大蛇の巨大な紅の尖端が割れた舌のやうに
ちょろりと吾の方へと飛び出しては
吾の気配を感知し、
そして、そいつは大口を開けては
内部の濃密で漆黒の闇を吾に見せびらかす。
しかし、辺りは既に日は暮れて暗い暗い闇の中。
ところが、そいつが大口を開けると、
闇の中に更に濃い闇が出現し、
はっきりとそいつが大口を開けたのが解るのだ。
そいつの魂胆は見え見えで、
吾を妖しい毒を放つ気配で失神させては、
丸呑みするつもりなのだ。


――すたたたたっ。
吾はそいつに斬り込んだ。
吾は直ぐさまにそいつの妖しい気配に取り囲まれたが、
吾の充溢した気配に気遅れしたのか
そいつの妖しい気配は吾に纏はり付くのを躊躇ってゐた。
吾はその隙を見逃さず、
一閃の下、
そいつを一振りで切り裂き、
殺戮した。
主を失った妖しい気配は、
毒気を抜かれはしたが、
一斉に吾に覆ひ被さった。
――ううっ。
息を止められた吾は、
暫く失神してゐた。


吾は気が付くと化け物になってゐた。

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