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アルフレート・シュニトケの音楽をかけながら
自刃したうら若き乙女が白目を剝いて
仰向けに抛って置かれた和室の中に漂ふ不穏な空気のやうに
死臭が漂ひ出す寸前のおれの内部は、
性根が腐ってゐるに違ひない。
そんなおれだからこそ恥も外聞もなく
言葉が吐けるのかもしれぬ。
それも下らぬ言葉ばかりで、
しかも、同じところを堂堂巡りし、
更に下らなさに拍車をかける。
さうなったらおれは土壺に嵌まり、
おれ自身を取り繕はうと
ちょっとは価値ある人間に見せやうとして
内心では「なんて嫌な奴」と思ひながらも
上滑りする言葉を尚も吐き続ける。


――ざまあ見ろ!


とどのつまり、最後は相手におれの論理矛盾を突かれて
万事休すなのだ。
そもそもおれが吐く言葉は論理的かといふと
そんな事があった試しはなく、
ただ、見得をはりたかっただけなのかもしれぬ。
誰彼構はずおれはおれを承認してほしくて、
おれが承服しかねるこのおれはお大見得を切るのかもしれぬ。
しかし、そんなことは相手は百も承知で、
へらへらと嗤って「こいつ馬鹿だな」と目で語りながら、
おれの馬鹿げた言葉を聞いてゐる。
さうして最後に相手はおれにとどめを刺す。


訳知り顔で話してゐたおれは、
一気に己に酔ってゐた状態から醒め、
ぐうの音も出ないのだ。
なんと惨めなことか。
この屈辱を以てしておれは尚も語らうと
宙を彷徨ふ言葉を探すのであるが、
もう、言葉は雲散霧散してゐて
おれは沈黙せずにはをれぬ。


その時の鬱憤は内部に溜まり、
おれの内部には不穏な空気が漂ひ始める。
しかし、最早おれはそれを丸呑みして、
おれがおれである事を断念し、
その屈辱を甘んじて受け容れなければ
恥じ入るおれの立つ瀬がない。


――ふふっ。立つ瀬がないだって。そんなもの初めからないぢゃないか。お前の存在そのものが恥なのさ。それはお前が百も承知だろ。

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