時間といふ事象に再現前する吾を
追ってゐるうちに迷子になってしまったやうだ。
そもそも時間が曲者なのだ。
確かに時間は過ぎてゐるのだが、
その摑み所のない時間の正体を
追ってゐると、
気が狂ひさうで、
正しく狂気の沙汰なのだ。
それはまるで濃霧の中の白い影を追ふやうで、
将又、闇の中の黒い馬を追ふやうで、
確かに存在するのであるが、
気配のみを感じるばかりで、
その正体は何時まで経っても闡明しない。
だが、時間が進まぬことには思考すらできぬ吾は、
一体全体時間の何なのだ。


嗚呼、闇に薄らと浮かぶ吾が影よ、
その私を虚仮こけにする吾は、
ふああっと欠伸をしては
私を一突きで刺し殺す。